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よくある誤解ケースメソッドでは議論がどこに向かうか分からないので、 教える側に教えたいことが明確にあり、かつ、それが伝達可能であるものならば、おそらくは講義して教えた方が効率的です。しかし、経営実務家が持つべき能力群は、経験や反復訓練によって磨かれる類のものなので、教師から学習者に直接的に伝達することができません。そうなると、学習者自身が自分の中にその芽を育んでいくしかありません。つまり、必要な能力が宿っていくような場と時間を学習者に提供していくことが、教室で経営能力開発を行う早道になるのです。「教育効果」の項で説明した能力群が宿っていく環境として、学習者たちが自分たちで動かしている討議の場はとても適しています。
ケースメソッドで現実感の乏しい議論をするよりも、 OJTを含めて、実務実働経験による学びは実務家の成長にとって不可欠です。しかし、実務経験から得られる訓練のチャンスは意外と限られています。ケースメソッド授業では、ケース教材という媒体に乗せて、さまざまな擬似的経営状況を教室に持ち込むことが可能です。「他業界に転職することなく異なる業界のことを学ぶ」「他部門に異動することなく未経験部門の立場での意思決定を体験する」「一日で企業の30年の歩みを俯瞰する」− このように単位期間内に消化可能な訓練の種類と量という視点でみれば、ケースメソッドは相当効率的です。ただし、十分な予習と活発な発言がなされなければ、効果的な訓練が成立しないことを忘れてはなりません。 |
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